河出書房新社の著:種村季弘、画:瀬戸照の「不思議な石のはなし」を読んだ。読みやすく、面白かった。
タイトル通り、世界各地の石にまつわる不思議な話や錬金術などに関わる魔術的な色彩の濃い奇譚が、軽妙な筆致で書かれている。各章題も「恋する石」に「食べる石」、「産む石」など目を惹くようなインパクトあるものばかり。挿画も美麗で、それぞれの物語の持つ不可思議さを更に引き立てるようだった。
あとがきの、「何とはなしに路端の石を拾ってみると、色々な雑多な記憶を思い起こさせられる。ただの石ひとつが持つ記憶容量の多さに驚かされる。」(意訳)という著述が妙に記憶に残った。何の変哲もない石に対して、色々なものを見立てたり見出したり擬えたり出来るような心の静謐さや想像力の豊かさなどを、自分も常に持っておきたい。
講談社文庫の新井素子著「グリーン・レクイエム」のkindle版も読んだ。10年くらい間の空いた再読になる。
収録作の3編が3編とも面白かったし、何ならあとがきまで含めて面白かった。
再読にあたり、「宇宙魚顛末記」のオチ、というか作中で陥る危機の脱し方のみしか覚えていなかった自分の記憶力の乏しさには毎度のように驚かされている。
今回読んでいて、「宇宙魚顛末記」の登場人物である佳拓さんの語る「落ち込んで自己嫌悪している暇があるなら、今度は次の作品を創れ」(意訳)などの創作論がとても心に残った。実行できるかはまた別として。
それにしても、表題作を二十歳前で書き上げてしまう作者の持つ筆力の早熟さに脱帽してしまう。