24.09.12.

日々過ごす中で、あまり元気が出ない。まあ、ようやく蔵書管理アプリをインストールしたので、少しずつでも有用に利用してゆくつもり。


創元推理文庫の小林泰三著「アリス殺し」のkindle版を読んだ。面白かった。


作中の舞台のひとつである「不思議の国」での冗長で癖の強い掛け合いに、中盤程度までなかなか馴染めずにいたが、「そういうもの」と捉えることが出来た瞬間、捲るページ(電子書籍だが)が増えていき、気づいたら読破していた。


不思議の国と現実世界(地球)、リンクした二つの世界で立て続けに起こる凄惨な殺人事件の犯人を突き止める、というあらすじ。


終盤で明かされる二つの世界の関係性や、「不思議の国のアリス」というお話の題材の扱われ方、そして物語の終わり方などは、如何にもこの著者らしいなと思わせられるものがある。


「何でもするから殺さないで」と命乞いをする相手に「何でもする?なら死んでほしい」と返したり、銃を突きつけられても「驚いてはいるがパニックに陥るほどではない」と気丈に振る舞う相手に対して「なら良かった、では安全装置を外します」というような、ある意味で小気味良さすら覚える冷たく冴えた掛け合いが印象深い。


個人的には、作中でとある人物がパワハラに苦しめられる不憫な役回りで登場するが、その哀切な独白シーンが妙にリアリティに満ちた悲愴なものであり、もしや実体験に基づくものかと変な勘繰りをしそうになった。